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自分が商品であったなら

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例年,授業がない2月から3月の間は,招聘していただいた講演会やワークショップの準備をしたり,学会発表の準備をしたりして過ごしているのですが,今年は,コロナウィルス感染拡大の影響で,予定していた行事がことごとく中止になり,本当に久しぶりに,いろいろなことをじっくりゆっくり考える時間を持つことができました.

 

 

ただ,今回は,世界的なパンデミックという生まれて初めて経験する状況の中,「自分には一体何ができるのか」,「どんな形で世の中に貢献できるのか」ということを強く意識した時間となりました.

 

 

日夜,感染者の対応に従事し,地域医療を支えてくださっている医療関係の方々,政府,地方公共団体の方々,業務に多大な影響を受けている民間企業や自営業の方々,そして新学期を迎える大学で方針を決めるために翻弄してくださっている幹部の方々(すみません; ; )がおられる中,自分はほとんど大きな影響は受けず,通常通りの仕事ができる状態. 医療にも貢献できないし,政策に関与することもできない. そんな中,自分には何ができるのか. 自分が社会に提供できるものは何か. これまでもそんなことをぼんやり考えることはあったけれど,コロナウィルスが猛威をふるった2020年3月は,自分の価値や役割について改めて考える時間となりました.

 

 

結果的にこの3月に何をしたか. それは(自分の今の強みを最大限に活かし,もしかすると最終的には世の中の人々の役に立つかもしれない)本を書くということでした. ちょうど,とある出版社から本を出す計画が今年始めから進行中で,その原稿は夏以降に原稿を書き終える予定だったけれど,想定外の時間をいただけたため,最終的には世のためになるかもしれない,というかすかな可能性を信じて,この一ヶ月は,「明けても暮れても原稿を書く」という毎日を過ごしました. 自分勝手と言われるかもしれませんが,自分にはこんなことしかできない. だから今すぐ役に立てなくても,いつか役に立つと信じて,とにかくコツコツコツコツ書き続けることにしたのです.

 

 

「自分が商品であったなら」

 

 

松浦弥太郎さんが『おとなのまんなか』という著書の中で書いておられることですが,私も最近,自分のことを,一つの商品だととらえることがよくあります. 大学の教員は,自分の趣味のために研究をしているのではありません. 最終的には,得られた成果が,今よりも世の中をよくすることに還元される必要があると思っています. といっても,私の場合は割とマイナーなことをやっているので,「世の中」というような広い領域をターゲットにすることは無理があるかもしれませんが... でも,「必要とされているから研究をする」,「必要とされているから提供する」,そういう気持ちは常に持ち続けていたいと思いますし,「伝え続けること」,「発信し続けること」を常に自分の仕事にしていたいと思います.

 

 

松浦弥太郎さんが,「商品の価値」について,面白い例を挙げていました. 「みずみずしい赤いリンゴ」のような商品であれば,新しさの全盛期を過ぎたら価値はなくなってしまいます. 旬の間にわっと買われて,食べられて,消費されたらおしまい. しかし,それが,「リンゴ酒」のような商品であれば,新しさの全盛期を過ぎても価値は失われません. さらには,時を経て熟成され,おいしさを増すこともできます. 香りづけとして脇役に回り,おいしいお菓子を生み出すこともできる. 使い道は無限に広がるはずです.

 

 

何だか素敵な例だなあ...と思いました. 

 

 

自分もこの「リンゴ酒」のような,いろいろな領域で役に立てるような商品価値をプロデュースしていけたら...と思います. 

 

 

(写真は,沖縄で購入した琉球ガラスの花瓶です.パンデミックの中,気持ちを切り替えて新学期を迎えるために)

 

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おとなのきほん

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この春,いろいろな本を読みましたが,中でも新年度がスタートするこの時期に読んでおいてよかったと思ったものがあります.

 

松浦弥太郎さんの『おとなのまんなか:新しいことはまだまだ,できる』(PHP文庫)

 

です.

 

この本は,おとなが「自分のまんなかにある基本に立ち返る」この大切さについて,「文章の書き方」,「働き方」,「人との付き合い方」,「趣味の持ち方」といった観点から,松浦さんならではのシンプルで丁寧な文体で語られています.

 

基本に立ち返るということは,特に年齢を重ねたおとなにとって大事なことだと思います. 私たちは,年を重ねるにつれて,だんだんと,自分にいろいろなものがくっついてきます. 例えば,知識や経験,世界観,仲間,愛情や愛着. それらは,自分にとって財産ではありますが,たくさんのものがくっついてくることによって,徐々に,シンプルから遠ざかっていきます. その結果,自分を見失ったり,なぜ今これをしているのか,その出発点や原点を忘れてしまったり,ということが起こります. いろいろなものを持っていて華やかに見えるけれど,一体この人は何をしている人なんだろう?そんなふうに他者からは見えてしまう,そんなことも起こるかもしれません. 

 

「無駄なものがいっさいない,そぎ落とされた最小限のものだけで,すっと立っている.それこそ基本のありようです」

 

という松浦さんの言葉には,いろいろな経験を積んできたおとなが,改めて「自分の大事にしている基本に立ち戻る」ことの大切さが凝縮されているように感じます.

 

アレンジされた華やかさがなくても,シンプルな基本だけで,いつも凛と立っている. 

 

研究は,常に「新しいもの」を求められる仕事ですが,「新しいもの」は,このような何があっても揺るがないシンプルな基本から生まれてくるものなのかもしれません.

 

大学の職に就いて約14年. 経験値を全部削ぎ落として,一度,シンプルな基本に立ち返ること. 今の自分にいちばん必要なものに改めて気づかせてくれた本でした.

 

 

 

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