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学びほぐし

広島の後,仙台に移動しました.


東北大学で開催された研究会に参加してきました.


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実は,初めての仙台です.


9月初旬の仙台は,もう秋の気配でした.

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東北大学の高度教養教育・学生支援機構という部署は,「学びの転換」が求められている今の大学教養教育のロールモデルとなるような様々な取組みを行っています.


素晴らしいのは,その取組みの結果を外部にも積極的に発信している点で,新しい知見の共有のために様々なセミナーを開催してくださっています. 申込方法もユーザーフレンドリーで,HPやパンフレットのデザイン,レイアウトも美しく分かりやすく,実に素晴らしい. 


今回は,「アカデミックライティングを指導する」というテーマで開催されたセミナーに参加してきました. 井下先生の講演もあるというので,これを逃すわけにはいきません.

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結果的に,セミナーは,期待していた以上の内容で,はるばる仙台まで来て大正解でした. 特に,井下先生の "Unlearn" の重要性についてのお話が心に残りました.


"unlearn"は,「学んだことを忘れる」という意味の他に,「学び直す」という意味があります. これは例えば,型通りのセーターをまず編み,次にもう一度,元の毛糸に戻してから自分の体型の必要に合わせて編み直すということで,これを学習に例えるならば,自分の積み重ねたきた学びの束をほぐして,あるものは捨て,あるものは練り直して,新たな学びを創造する...ということを意味するのだそうです.


哲学者の鶴見俊輔氏は,この"unlearn"を「学びほぐす」と訳しているのだそうです. この訳は,実にすばらしい. シンプルで短い表現の中に,何かを学ぶことや何かを身につけるために必要な様々なことが凝縮して詰め込まれている気がして,感銘を受けました.


例えば,ライティングの指導の場合,全くの初心者には,ターゲットとなるジャンルのモデルを学生に見せて,構造やスタイルを分析させることで,まずどのような「要素」が求められているのかを理解させることが必要だと言われています(もちろん,賛否両論あり,モデルを見せることに対する否定的な見解もあります). 


しかし,学習者は,このモデルの通りに書く練習をした後,徐々に,自分が置かれた状況に合うように「自分の言葉で」文章を書けるようにならなくてはいけません. コミュニケーションとは伝える内容があるわけですが,その内容の「伝え方」は,相手が誰であるかとか,何のためにその情報を伝える必要があるのかとか,自分がどのような場所にいたり,どのような状況に存在しているのかなどの様々な社会的要因によって変える必要があるからです.


つまり,学んだモデルをいったん捨て,自分の状況に合うように組み立て直すことができること. このプロセスが何かを習得するためには非常に重要になるということです.


そういえば,小学校から大学まで本当にたくさんのことを学んできたと思いますが,多くのことがあまり身に付かないまま終わってしまったような気がします(もちろん,無意識に役立っている知識というのもたくさんあるとは思いますが). たぶん,身に付かなかったと感じるのは,自分が"unlearn"(学びほぐすこと)をしなかったからなのかもしれません.


学校で学んだことを「自分のもの」にするためには,いったんそれらを"unlearn"することが大事なのでしょう.


料理なんかも同じことが言えるような気がしました. 私は豆腐好きなもので,このところ美味しい麻婆豆腐をいかにして作り上げるかに考えをめぐらせているのですが,クックパッドのレシピを見て,そのとおりの調味料の配分で麻婆豆腐を完成させ満足していた初期の段階から,徐々に,食べる人のニーズや食べる時間帯などの社会的状況に応じて,オリジナルの麻婆豆腐を作り上げる段階に成長していきました. この過程において,私はクックパッドのレシピで"learn"したものをいったん"unlearn"し,様々な試行錯誤により,美味しい麻婆豆腐の作り方を"relearn"した,というように説明ができると思います. 鶴見俊輔氏的に言うならば,麻婆豆腐学習過程において「学びほぐし」が起きたということです.


井下先生のアカデミックライティング指導法についての講演がいかに素晴らしかったかを書こうとしたのですが,結論が麻婆豆腐になっていました. 


東北大学高度教養教育・学生支援機構のセミナーは,知見に富む大変素晴らしいものでした. また仙台に行きたいと思います.

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