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後期

Dscf4015

先週木曜日から後期がスタートした.

学生が戻って来たキャンパスは,静まり返っていた夏の一ヶ月が嘘だったかのように,活気づいている. 

この切り替えの時期にいつも思うことは,若い学生たちからみなぎるエネルギーとパワーに,自分がどれだけ力をもらえているかということである. 論文執筆のため引きこもりのニート状態になるのが自分の夏の習性であるので,静か過ぎるキャンパスは,時に精神状態を不安定にさせる. そして,もしかすると私はオタクなのだろうか,いや,オタクではないですよね,的な自問自答を繰り返し,永遠に答の見つからないスパイラルへと陥ってしまうのである. しかし,突き落とされたスパイラルの中から抜け出す手助けをしてくるのは,振り返ればいつも学生だったような気がしている. 

それにしても,私立大学の特徴なのか,本当に多種多様な学生がいる. このことも,この夏から秋への切り替えの時期に再認識することの一つであり,「なぜ故にこれほどまでに多種多様なホモ・サピエンスが本学には存在するのだろうか」という素朴な疑問が沸いてくる. まさに,研究者としての観察力と洞察力が掻き立てられずにはいられない不可思議な現象である.

例えば,私の必修英語(二)というクラスを履修しているT君である. 彼はなぜかいつも左手に赤いタオルを持っている. 授業中もそうだし,キャンパスを歩いているときも左手には赤いタオルである. 手に持っているだけなら特に珍しいことではないのだろうが,彼はなぜかいつも左手のタオルを振っているのである. 時に激しく時に穏やかに. 永ちゃんかい. というか,矢沢永吉氏のコンサートじゃあるまいし,授業中にそんなパフォーマンスはやめてほしいと思うのだが,「授業中にタオルを振ることは禁止します」という指示を出すちょうどいいタイミングがつかめず,前期は結局禁止令を出すことに失敗してしまった. 後期は,シラバスの注意事項のところに記載すべきか思案中だが,先日,追試を受けに来たT君が,試験中もやはり赤いタオルを振っていて,その勢いが前期よりも激しくなったような気がして,そのうち"YA・ZA・WA〜!!"って叫びだすんじゃないかこいつって雰囲気を醸し出していたので,やはり記載の必要ありなのかもしれない. T君は練馬区の方から通学しているので新宿駅を毎日通っているらしい. 新宿駅で赤いタオルを振っている青年を見たら,それは本学のT君だと判断していただいて間違いないかと思われます.

赤いタオルのT君に負けずとも劣らないのが,私の選択英語(二)を履修しているKさんである. Kさんは人とコミュニケーションを取ることが苦手な学生で,恐らく,友達はほとんどいないと思われる. 詳しいことは分からないが,過去に経験した苦い出来事がトラウマになっているようで,他人が信じられなくなっているようである. なので,Kさんはクラスメイトのことを「敵(テキ)」と描写し,クラスメイトとの付き合い方を「策(サク)」と描写する. そして,クラスメイトとの間に置くべき心理的な距離のことを「防塞(ボウサイ)」と描写する. というか戦国武将かい. と,いつも思うのだが,本人は大真面目なので,笑うこともできず,そのうち,Kさんは一教員である私が扱える領域を超えた学生なのかもしれないと思うようになっている. 先日は,後期に履修する新しい授業がどんな雰囲気なのか怖いので「刺客(シカク)」を送ろうかと思っていると真顔で言っていて,忍者かよっ甲賀流かよっ…と,まさかのダブルツッコミを(心の中で)入れてしまったのだが,本人は大真面目で言っているようなので,あえてダブルツッコミは口に出さないことにした. 代わりに,「Kさんは時代的が好きなの?」という質問をしてみたのだが,「時代劇は見ません」というガチな返事がKさんから返ってきた. 見ーへんのかい. 一体全体,「策」だの「防塞」だの「刺客」だのという語彙をどこで習得したのだろうか,こうした武将・忍者系の決して使用頻度の高くない語彙が日常語彙に自然に入っているのはなぜなのか,研究者としての好奇心と執着心が掻き立てられてしまうのである. そして思わず「『策』なんて言葉をどこで習得したの?」とダイレクトに質問してしまったのだが,「たぶん幼稚園の頃から使っています」というガチな返事がKさんから返ってきた. そんな幼稚園児おるんかい. と絶妙なタイミングでツッコミを入れたくなってしまったが,だまっておいた. やはり,Kさんは私が扱える領域を遥かに超えたところにいらっしゃるようである. この頃は,「発達障害」だの「学習障害」だの,「○○障害」という病名で学生の異質な行動を一括りにする傾向があって,私は個人的にそういうsimple framingは好ましくないと思っていたのであるが,専門家のケアが必要な学生がいることをやはり受け止めなくてはいけないのかもしれない. しかし,Kさんが私に心を開いていろいろなことを話してくれるのは,私が「策」だの「防塞」だの「刺客」だのという言葉を聞いてケラケラ笑っているからである. 関西流ツッコミはカウンセリングに生かせるのかもしれない. 

バドミントン・サークルの会長であるO君が,夏休み中に左手を骨折したということで,「学生課に報告する必要があるでしょうか?」と言ってきた(私はバドミントン・サークルの顧問をしているのである.仕事は書類に印鑑を押すだけであるが). 骨折ってそれは大変. それにしてもバドミントンで左手を骨折って,O君は左利きだったんだねという話をしていると,「いえ,右利きです」とO君. じゃあなんで左手の骨折るねん. と思って詳しい話を聞いていると,骨折の原因となったのは,バドミントンじゃなくて「腕相撲」だと言う. なんじゃそれ. というか,たかが腕相撲で…と思ってしまうのだが,飲み屋で開催されたという腕相撲大会でどれほど激しいバトルが繰り広げられていたのだろうかと想像すると,身の毛がよだつ気がした. あーおそろしや. というか,腕相撲くらいでいちいち学生課に報告してどうすんねんって話だ. 「腕相撲は今後禁止です」なんて禁止項目が大学側から出されたら,君たちはこれから腕相撲が出来なくなってしまいますよって話だ. というか,そんな禁止令が出されずとも,もう大学生なのだから腕相撲なんかやめましょうねって話だ. 「腕相撲はやめましょう」なんていう指示を大学生に出さなければならない日が訪れるとは,夢にも思っていなかった. 情けないやら面白いやら何だか複雑でありますが,それでも,何か憎めない本学の学生である. ちなみにO君はこれから半年かけて左手のリハビリを行うのだそうだ. どんだけ激しい腕相撲やってんねん. 「策」とか「刺客」のKさんがそこに参戦したら,腕相撲大会はまさに「戦(イクサ)」そのものになっていたかもしれませんが. まあ骨折くらいでよかったかもしれない.

こんな感じでスタートした後期なのだが,ひたすらツッコミを入れなくてはならない毎日が何となくせわしなくて,オフィスのデスクに「ナギ」を飾ってみました. 和歌山県の世界遺産,熊野速玉大社に育つ「ナギ」の木は,スピリチュアル・プランツとして,古くから大事にされてきたのだそうだ. 魔除けとまではいわないが「平安・安全のお守り」として置いてみた.

みなさまにとっても心穏やかで平安な秋になりますように.

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コメント

ご無沙汰してます!!
中国当局もむやみに見れないサイトを増やすのをやめたのか(みれないの多すぎですから)、サッチーさんのブログが見れるようになりました。今日、ふと思い立って開いてみたらみれた!
うれしいです。また時々読ませていただきますね。

学生って本当に多様なんですね。
日本の教育は昔とちがって、個性を残したままのびのび育てる方向へ進んできた結果かもしれないですね。ただ、社会がそのままの個性で受け入れられる体制にはなっていないのが現実ですが。。。

私は授業の履修が終わり、今は自分の研究に関するものだけを読んだり書いたりできるようになりましたが、まさに引きこもり状態で、思考が進まないときにはこのままでは気が変になるのではないかと思うときもあります。
刺激的な学生はこちらでは見かけませんが、なるべく学校のセミナーとかに参加してしのいでます。
また今度メールでもさせていただきます。
お元気で!

投稿: Hitomi | 2011年10月19日 (水) 15:07

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