« Tim Tam | トップページ | pilot study »

テルマエ・ロマエ

Dscf3551_3

古代ローマの男が現代日本へタイムスリップ.

タイムスリップした場所はなんと

風呂場だった. 

そこで目にした高度に発達した日本の風呂文化に驚愕する古代ローマ人の男. シャワーに風呂桶にアカ擦りタオルにシャンプーハットに風呂上がりのフルーツ牛乳に,あれもこれも何という文明度の高さ! この高度に発達した文明世界から学び取れることには際限がないぞ. ばばんばばんばんばん.

昨年末に出版され,注目を集めている『テルマエ・ロマエ』の筋立てである.(ばばんばばんばんばんは筋立てとは関係がない.by ドリフターズ世代)

普段,漫画を読まないわたしにとって,この作品は高校生のときに読んだ『王家の紋章』以来,かなり久しぶりに手にした漫画ということになる. そういえば,『王家の紋章』もタイムスリップが題材だった. アメリカ人学生のキャロルが古代エジプトにタイムスリップし,若きメンフィス王と恋に落ちるという,3000年の時空を超えた壮大な歴史ロマン物語だった. どう考えてもあり得ない設定で,「キャロル」と「メンフィス王」というプロトティピカルな名前の組み合わせにも笑いが起きそうになるのだけれども,当時はすっかりはまってしまい.「好きな男子のタイプはメンフィス王タイプ」とか言ったりしていた. メンフィス王タイプってどんなタイプや. そんな男子おるんかいって話だが当時はまじめにそう思っていたような気がする. 

そんなありえない「タイムスリップ」という設定が,『テルマエ・ロマエ』の中核になっている. が,『王家の紋章』では現代から古代へのタイムスリップだったのに対し,『テルマエ・ロマエ』では,古代から現代という逆のタイムスリップである. しかも,タイムスリップした先が日本の風呂だったというところが斬新だ. 

考えてみると,日本の風呂ほど高度に発達した文明を持つ国は,世界中どこを探しても他に存在しないだろう. 外国に長く住んだことのある人なら誰もが持つはずである「湯につかりたい願望」. この願望を満たしてくれる場所は,日本の風呂以外に存在しない. ハワイ大学に留学していた時,同じアパートに住んでいた日本人女性が,ウオールマートで大型の衣装ケースを買ってきてそこに湯をためて浸かっているのだと話していたことを思い出す. 衣装を収納する目的で作られたはずの衣装ケースが「風呂」目的でも使用可能なのだという驚愕の事実を知ったのは,そのときが人生で初めてだった. あまりに感動してしまい,「すごいですね〜」という言葉しか出てこなかった. 確かにすごい. しかし,すごいですね〜と感動しつつも,最後まで衣装ケースを「風呂」目的で使用するという行動に出ることはできなかったわたくしである. なぜなら衣装ケースは風呂じゃないからだ. それに,万が一バランスを崩して衣装ケースごとひっくり返ってしまったときの自分の姿はあまりに痛々しく想像に耐えない. たぶん衣装ケースに自分の体を収めるには体を「ん」の字に曲げないといけないので,衣装ケースがひっくり返ったら「ん」の字の体勢のままひっくり返ることになるのだ. んー恐ろしい.

とにかく,『テルマエ・ロマエ』では,こうした日本独自の風呂文化が,古代ローマ人の視点から描かれている. はっきりいっておもしろい作品だ. 私たち日本人は,衣装ケースを風呂にしてしまうくらい風呂に対する執着心が強く(わたしはしなかったけど),だからこそ日本の風呂文化はここまで高度に発達したのだという歴史的事実に改めて気づかされる.

読者としてわたしが最も魅了されたシーンが2つある. まず1つ目は,古代ローマ人のルシウスが日本の銭湯にタイプスリップし,壁面に描かれた富士山の絵を見て驚愕するシーンである. 目を真ん丸にして「こっ...これはっ...ポンペイのヴェスビオス火山ではないか!!」と叫ぶのである. フジサンです. そして2つ目は,ルシウスが,おじいちゃんのかぶったシャンプーハットを族長の冠と勘違いするシーンである. 確かにシャンプーハットってどこかの島の少数民族の族長がかぶる冠としても機能しそうである. シャンプーハットの新しいビジネスチャンスかもしれない. 今後の顧客ターゲットはおじいちゃんじゃなくて族長だ.

このように,ルシウスの驚愕ぶりを笑いつつ,日本の風呂文化の奥深さや工夫の数々を再発見できる,そんな仕掛けが『テルマエ・ロマエ』の面白さにつながっている.

ちなみに『テルマエ・ロマエ』とは『ローマの風呂』という意味なのだそうだ. 古代ローマにも公衆浴場があったらしく,その当時のローマ風呂事情なども本作品を通して学ぶことができる. 教養書としての側面もあり,一読の価値ありである. ばばんばばんばんばん. 風呂はいれよ.

|

« Tim Tam | トップページ | pilot study »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Tim Tam | トップページ | pilot study »