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No Man's Land

Jan26_001_3Jan26_034_2フランス大使館で開催されているアート展に行って来た.

"No Man's Land"

大使館の機能は敷地内に新築した新庁舎に移転済み. 近く取り壊される旧館が会場となっている. 取り壊しまでの間に,この旧館を使って何かできないかということになり,日仏アートの交流の場としての"No Man's Land"が実現したという. エクセローーン.

新庁舎に移転して誰もいなくなったその土地は,まさに"No Man's Land". 残された旧館の歴史の堆積とともに,敷地内全体が芸術作品に変身していた.

大使館の中に入れる,ということだけでもこのアート展の価値は大きい. 普通の人が大使館の奥に足を踏み入れる機会はまずないからだ. そんなわけで,JR恵比寿駅から30分くらい歩いて(バスに乗るべきだった)やっと大使館に到着したと思ったら,ものすごい行列が. そこからまた30分くらい並んでようやく大使館正面玄関へ. シュペーーブ.

Jan26_004_2Jan26_003_2正面玄関を入ると,建物の側面に描かれた巨大なグラフティアートが目に飛び込んできた. 大使館の建物にこんな落書きしたら怒られますよ. この落書きは,フランスでグラフィティ・アートの先駆者とされるスピーディ・グラフィトー氏が描いたらしい. グラフィトー氏によるグラフティってなんかオヤジギャグみたいです. それはともかく,このグラフィティは何となく「寂しげな」感じがして,それが旧館の色褪せた風合いにうまくマッチングしていると思いました. 人間が作り出すあらゆる事象の内には本質的に芸術性が含まれている,それゆえに落書きも芸術作品になるのだということが,この落書きを見ているとよく分かります.

Jan26_041_3Jan26_025_3廊下の壁にも,さまざまなアーティストが自在にペイントを施していた. 中でもわたしが気になった絵は,「Tokyo」とか「Sushi Bar」とか「アーバン」とか「銀河」とか整合性の全然ない日本語文字があちらこちらに描かれている絵だった. なんで「Sushi Bar」と「銀河」なんですかね. そんな不思議さも芸術になってしまうから不思議だ.

Jan26_014_2Jan26_017_2館内には,大学教員の研究室サイズの小部屋がたくさんあり,それぞれの個室でユニークな作品が展示されていた. この小部屋は外交上の秘密の会話がリークしないようあらゆる電波が遮断できるような作りになっているらしい. この小部屋では一体どんな極秘情報が話し合われたのだろうか. そんなことを考えていると,自分みたいな普通の人がこの部屋に足を踏み入れていることがとても不思議に思えてきた. 外交官が使っていたと思われるデスクには,今やなぜか羊さんが並べられ,天井からはなぜかレインコートとかランドセルとか靴がぶらさげられている. すごく不思議な空間だ.

Jan26_037旧館の最上階,いちばん奥の個室には,白いふかふかのカーペットが敷き詰められていた. 荷物がすべて運び出され誰もいなくなった空っぽの空間からも優雅で重厚な感じが伝わってくる. 部屋の入り口に掲げられていた名札には,"Les Ambassadeur"の文字が. 駐日フランス大使. わー大使のお部屋. なんかすごいところに自分は今いるのだという気がしてきて,部屋そのものが芸術作品のように思えてきた. それにしても大使くらいのポジションになると部屋に白いカーペットを敷いてもらえるのですね. 階級社会を地で行く外交官の世界が白いカーペットに現われていると思いました. 

Jan26_031大使のお部屋のお隣は,グレーのカーペットでした. このお部屋は,特に何かの展示がされていたわけではないのだが,広い部屋にひっそりと残された椅子と,無造作に束ねられたケーブルが,アート展のタイトルになっていた"No Man's Land"を象徴しているような気がして,すべての作品の中で最も印象に残った. どんな人がこの椅子に座っていたのかなとか,この窓から見える景色をどんな気持ちで眺めていたのかなとか,この部屋の過去の様子に思いを馳せていると,ポツンと残された椅子とケーブルにはとてつもない歴史が詰まっていて,椅子とケーブルが歴史の堆積そのもののように思えてきた. 一時代を終えて今は取り壊しを待っているだけと思うと何となく寂しい気持ちになった. 

こんな気持ちにさせられるアート展を経験したのは初めてのような気がする. もうすぐ取り壊される場だからこそ感じ取れる何かが作品ひとつひとつにあったと思うし,もうすぐ取り壊される場だからこそ実現したアート展だと思う. 

フランスが「文化の国」と言われる理由が"No Man's Land"に行って分かった.

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コメント

さすが「文化の国」ですね。
週末見に行きたいです。

結構一番最後の写真が現在のオフィスの雰囲気に似ているので驚きました。タイピングする音が聞こえてきそうな気がしました。

では、よい週末を

投稿: girigiri | 2010年1月29日 (金) 13:20

girigiriさん,ボンジュール:-)

girigiriさんも好きだろうなと思いながら見ていました.開催期間は2月18日まで延長になったみたいです.

http://www.kanshin.com/keyword/2002534

わたしももう一度行くつもりです!

投稿: satchy | 2010年1月29日 (金) 14:55

有難うございます。

壊してしまうものに愛情をこめて芸術作品にし、心の豊かな国ですね。

投稿: girigiri | 2010年2月 1日 (月) 13:01

girigiriさん,

本当にそうですね.これがもし日本のお役所だったら…と考えてみました.同じアイデアはたぶん生まれてこなかったと思うのですよね.古くて使えなくなってしまっても,そこに新しい価値を生み出すってなかなかできないことですね.

girigiriさんがおっしゃる「愛情をこめて」という部分がとても大事なような気がしました.

girigiriさんと共感できてうれしい.

投稿: satchy | 2010年2月 1日 (月) 17:25

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