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点描

June3_010_2  学生のM君の作品が絵画展に出品されているというので見に行ってきた.

 場所は早稲田大学の学生会館. 3年ぶりの西早稲田. なつかしい. 

 去年,開通したという「副都心線」に初めて乗った. いつも思うことなのだが,東京の地下鉄は地下のすごく深いところを走っている. なのでエスカレーターとか階段の距離がすごく長い. 下りのエスカレーターに乗ると,おーーいどこまで降りていくんやーーと一人ツッコミを入れずにはいられない. 高所恐怖症のわたしは下の方を直視することができず,エスカレーターに乗ってしばらくは目をつぶっている. そして手には恐怖のために汗がにじんでいたりする. というかどんだけ怖がってるんや. ジェットコースターに乗ってるわけじゃないんですし. 神戸にも市営地下鉄があるけれど,東京の地下鉄ほど深いところを走っていないので,エスカレーターに乗っても目をつぶる必要はない. ユーザーフレンドリーな神戸市営地下鉄. そんなことより,「副都心線」って本当に必要だったのでしょうか. 電車に人が乗っていなかったのですけれど.

そんな「人が乗っていない」副都心線. 新宿三丁目から電車に乗り,西早稲田で下車. 早稲田大学の学生会館へ向かう. 戸山高校とか学習院女子大などを右手に見て歩くこの通り. なつかしい.

June3_012  M君は3年生で美術部に所属している. 絵や書道や写真などアートの才能を持ち,剣道は三段の腕前を持ち,数学が得意で,文武両道なM君であるわけだけれど,なぜか英語だけはどうしても受けつけないらしく,今学期わたしが担当している『再履修クラス』を(仕方なく)取っていらっしゃる. 再履修かい. 

 何でもできるのに英語だけは嫌いというのは,わたしがフルーツは何でも好きだけどスイカだけは食べられないということと同じなのかもしれない. 人には誰にでも好き嫌いがあるということである. 

M君の作品は,「京都の日本家屋の上で跳ねる二匹のイルカ」を描いていた. ハワイのクリスチャン・ラッセンのジャパニーズ・ヴァージョンという感じがした. M君は「点描」が専門で,このイルカ絵もボールペンでひたすら点を打っていったのだという. ボールペンの小さな「点」がこんな斬新な作品を生み出すなんてすごいと感動してしまった. 小さな「点」だけれど,その一点一点にはM君の心がこもっているのだと思った. 「何か大きなことをするためには,小さなことの積み重ねでしかないのだ」という人生の教訓をM君の絵から改めて学んだ気がした.

そして,もうひとつ考えさせられたことがある. 「英語再履修クラス」以外の場所でM君とじっくり話す機会がなかったら,M君にこんな才能があることを知らずに終わっていたかもしれないということである. つまり,教室に座っている学生さんを「英語能力」だけで判断してはいけない,ということである. 当たり前のことではあるけれど,「英語」を教えているし,「英語」を勉強している学生さんしか知らないし,学期末には「英語能力」のみに焦点をあてて彼らのパフォーマンスを評価しなければならないので,一歩間違えると「英語」だけでその人のすべてを判断してしまいそうになる. しかし,「英語」なんてその人を表すほんの一つの指標に過ぎないし,もしかすると「英語」なんて全然大事じゃないのかもしれない. 

人の才能というのはどこに眠っているか分からない. 眠っている才能を何か一つでも開花させることができればそれでいいのだと思う.

そういう意味では,わたしのような人間よりM君のほうがよほど成功していると言える. わたしは英語ができるけれど,わたしより英語ができる人なんて星の数ほどいる. 書くことは好きだけれど,わたしより書くのが上手な人も星の数ほどいる. 頑張って論文を書いているけれど,投稿してもなかなかアクセプトされない. 絵は好きだけれど,M君のような絵は絶対に描けない. 何もかもが中途半端なような気がする. しかし,もう自分の能力の限界にも気づき始めているし,眠っていた才能が突然開花するというマジックは決して起こらないことも分かっているので,これからも今やっていることをこつこつと続けていくしかないのだということも分かっている. M君の作品を生み出した「点描」のように.

M君の作品を見に行ってよかった.

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コメント

お久しぶりです。お元気そうで何よりです。
ところで都営地下鉄は私も恐怖を味わいます。私は高所恐怖症に加えて、閉所恐怖症ももっているので地価へずんずんと降りていくあの過程は怖くてたまりません。皇居を避けて路線を走らせるので、結局土地が足りず、現在ある線路の下を通す羽目になり・・・とどんどん下へ下へ行っているそうです。

「教室に座っている学生さんを「英語能力」だけで判断してはいけない」とちゃんと生徒さんたちの才能について考えてくれるSatchyさんが教えてくれるなんて、生徒さんたちは幸せだろうなあ。私もしっかり心に留めて、これから気をつけます。

ではまた。お元気で。

投稿: tressoles | 2009年6月 6日 (土) 13:54

tressolesさん,こんにちは.お元気ですか.

東京は,複数の路線が重なるようにして走っているんですね.背景には,皇居を避けなければいけないという理由があったんですね.なるほどー.それにしても,東京は電車がたくさん走っていますね.

教壇からながめていると学生さんってほんとにいろんな人がいるなぁと思いますよね.どうしてこんなに違う人間が形成されていくのでしょうかね.人間観察がおもしろいです.

tressolesさんはいかがお過ごしですか.夏にご帰国のご予定はありますか.

お元気でお過ごしくださいね.

投稿: satchy | 2009年6月 8日 (月) 09:34

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