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君の知らないところで世界は動く

41kjzr65mhl_sl500_aa240__2  最寄り駅前に区立図書館があるので,いつも二週間に一度本を3~4冊借り,通勤電車の中で読んでいる.

 4月は片山恭一さんの本をたくさん読んだ. その中で,『きみの知らないところで世界は動く』(2003)が特に心に残ったので,ここに書いてみた.

 物語は,主人公の「ぼく」と友人の「ジーコ」と恋人の「カヲル」の三人を中心に展開される. 三人とも同じ高校の同級生である. 高校を卒業し,別々の道へ進むことになった三人だが,「ぼく」と「ジーコ」,「ぼく」と「カヲル」,そして「カヲル」と「ジーコ」の絆はさらに深いものになっていく. でも,絆というのは,深まれば深まるほど,苦しく切ないものにもなりうる. そんなことを考えさせられる物語だった. そして,それは,友人の「ジーコ」の言葉に込められたメッセージでもあった.

友人の「ジーコ」は,「コージ」という本名をひっくり返しただけという実にシンプルなニックネームなのだが,このジーコは,そんなシンプルなニックネームとは相反して,いつもすごく深い言葉を口にする少年である. あまりに深いので,一見,世間の枠組みからこぼれ落ちてしまった偏屈少年のように思われてしまいがちなのだが,実はジーコの言うことはいつも正しいのである. わたしたち読者は,後になってそのことに気がつく.

例えば,こんなセリフがある. 夏休みに,ジーコが「ぼく」を旅行に誘う場面がある. 

「…旅行には地図を持っていかないのがポイントだ. だいたい地図に何が書いてあるっていうんだ? 地図なんて学校の教科書みたいなもんじゃないか. 本質的なことは何一つ書いちゃいない」

実はわたしたちは物事の上辺だけをひっかいているだけで,本質的なことは何も分かっていないことが多いのではないか,ということを考えさせられた.

この物語を読んだ後で,「ジーコ」に会いたくなった.

でも,「ジーコ」はもういないのである.

久しぶりに良い作品に出会った.

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コメント

駅前に図書館があるなんてとてもいい環境ですね。残念ながら片山恭一さんの本は読んだことがありませんが、最近は伊坂幸太郎さんとか奥田英朗さんとかが好きです。

投稿: しらいし | 2009年5月 4日 (月) 06:12

しらいしさん,こんにちは.

駅前の図書館というのはとても便利ですね.本があまり美しくないところが欠点ですけれど,とりあえず試し読みができるのがいいですね.最近は,まず図書館で借りたものを読んでみて,自分の本棚に置いておきたいと思ったものだけ買うようにしています.

伊坂幸太郎さんとか奥田英朗さん,私も読んでみようと思います.

片山恭一さん,たぶんしらいしさんもお好きじゃないかなと思います.『きみの知らないところで…』の「ぼく」が何となくですがしらいしさんに見えました.

早く前期終わってほしいですね.

投稿: satchy | 2009年5月 4日 (月) 12:05

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