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アンナチュラル

Mar19_016_2 引越しでバタバタしていたが,デスクとチェアが届き,荷物も片付いて,ようやく仕事ができる環境が整ってきたので,たまっていた仕事を片付け始める. 

 ちょうど今週デンバーで開かれている学会に出席したかったのだが,レジストレーションに加えて渡航費+宿泊費を計算してみると,自分の銀行口座の残高がかわいそうな状態になりそうだったので断念した. 学会に行けばオルテガ先生にも会えたはずなのだが. 会いたかった. カモーン. 今回はライティングに特化した発表もあったらしく勉強しに行きたかったのだけれど. tressolesさんの発表も聞きたかった. ざんねん. 全て自費というのはやっぱりきつい. 4月からは研究費をいただける立場になるので,出たい学会があるたびに銀行口座の残高と相談しなくてすむようになるのがうれしい. 

そんなわけでデンバーに行くのはあきらめて,部屋で仕事の片付けにはげむ. まず,来月実施するプレイスメント・テストの問題を作る. 大学一年生は語学の授業が必修なのだが,自分のレベルに合ったクラスで授業を受けてもらうために,4月にプレイスメント・テストを受けてもらうのである. 試験時間は70分. リスニング20問,グラマー20問,リーディング20問という構成. ライティングを入れたかったのだが,学生数を考えると採点が大変になるということで,マークシートで処理できる問題のみということになった. マークシートだけでは本当の力は測れないと思うけれど,短時間で大量採点が求められるときにはやむを得ない.

テストのレベルは,英検2級レベルということで,過去問などを参考に問題を作成する. 久しぶりに英検の問題を見て,使われている英語がやや不自然な気がして,ハワイではこんな英語を話すアメリカ人はいなかったなぁと思ったりした. 特にリスニングの会話聴き取り問題. 文法的には何も間違ってはいないのだけれど,プラグマティズム的に何か変な感じがするのである. 「放課後ゲームセンターに行くつもりなのですが一緒にどうですか,キャサリン?」,「ごめんなさい,ヒデキ.行けないと思います.なぜなら勉強しなければいけないからです」,「そうですか,では一人で行くことにします」,「また次の機会にぜひ,ヒデキ」というようなやりとり. ゲームセンターへ女の子を誘うという目的で繰り広げられるこんな会話がどこかで本当に展開されているのだろうか,という気がした. しかも,登場人物の名前はヒデキとキャサリンである. ヒデキ&キャサリン. なんか白いパンタロンを履き,白いギターを持って歌っていそうなコンビである. というか,何と間違えているのでしょうか. というか,学校帰りにゲーセンに寄り道したらあかんでしょう,ヒデキというツッコミを入れたくなったりした. というか,女の子をゲーセンに誘ってどうする,ヒデキ. キャサリンに断られても,それでも一人で行くのかい,ヒデキ. ヒデキー.

それならば,サッチーとオルテガ先生の間で起こるであろう次のようなやりとり…「データの分析は終わりましたか,サッチー?」,「オルテガ先生,実はまだデータそのものが取れていないのです」,「何ですって?」,「いえ,あのデータが取れていないのです」,「カモーン!」…というような会話の方がプラグマティズム的にも自然だと思われる. というか,どこが自然やねん. 最後に「カモーン」が言いたかっただけやんか. というか,くだらないことばっかり言ってないで仕事しなければいけません. カモーン.

まぁ語学の試験問題というのは,アンナチュラルな状況で問題が作成されるわけなので,程度の差こそあれ言語が不自然になってしまうのはやむを得ないことなのだろう. 以前,オーストラリアのモナシュ大学というところで日本語を教えていたとき,日本語リスニング問題のテープを自分たちで作成しなければならず,上の先生が用意した会話を録音テープに向かってしゃべらされたことがある. 「神棚が家にありますか?」,「はい,あります」,「おじいさんが神棚の水を取り替えたり,ご飯をお供えしたりしています」とかいうものだった. 「~があります」と「~たり,~たり」と「~ています」という文法項目を入れるために強引に作った文章だったような気がする. というか,なんで神棚やねん. と心の中でツッコミをいれていたわたしである. 上の先生が作った文章なので口には出さなかったけれど. 「神棚が家にありますか?」って日本人同士であまり聞かないような気がする. 突然聞かれたらびっくりしてしまうと思います. 

それにしても,まだ大学の研究室が使えないので,今は自分の部屋で仕事をしているわけだけれど,静かな部屋で,"Oh! We're running out of gas!! (ああーガソリンが切れそうだぜ!)"とか"Do you know who closed the window?(誰が窓を閉めたか知ってますか?)"とか"You look pale! (顔色が悪いですよ!)" なんていう奇妙な英語文がCDラジカセから次から次へと流れてくる状況では,仕事どころかそのヘンテコリンさに意識が向かってしまってどうも集中できない. もともと,プライベートな空間に仕事を持ち込むということが好きではないし,しかも引っ越してきたばかりということで,床についた汚れが気になって拭き掃除を始めてしまったり,最近手に入れたScotch Briteのパワーふきんでキッチンを磨き始めてしまったりする. このふきんは,ふきんはふきんでも「パワーふきん」と呼ばれているだけあって,その吸収力は驚くべきものがある. 引っ越してから,細々したものを買いに近所のイトーヨーカドーによく行っているのだが,4階のキッチン用品やお掃除グッズ売り場には,「これで磨くとピカピカになります」系の商品があふれていて,これまで黄色い化学ぞうきん『金鳥サッサ』しか知らなかった私は,世の中にはこんなにすごい商品が存在していたのかと驚いてしまった. そんなにピカピカピカピカ言われたら,どこまでもどこまでも磨き続けたくなってしまうではないか. 金鳥サッサじゃだめなのかい. つくづく,日本には便利な商品があふれていると思う.

仕事の話から金鳥サッサの話に話題が逸れてしまったのだが,部屋にいるとやはり集中できないので近くのカフェで残りの仕事を片付けることにした. 家から5分くらいのところに,落ち着いて仕事ができるカフェを見つけることができた. どの席の近くにも電源差込口があって,パソコンを持ち込んで勉強したり仕事したりすることを快く認めてくれている. 日本のスタバではときどき「電源はお使いいただけません」なんて言われてしまうことがあって(アメリカでは使い放題だったのに)残念に思っていたところだったので,このカフェとめぐりあえてとてもうれしい. それにしても,東京のスタバはどこもいつもすごく混んでいる. 近所のこのカフェではほっと落ち着くことができる. 自分が自分らしくいられるナチュラルな空間. 神棚はありませんよ. まだ言っている.

ナチュラルな空間でアンナチュラルな英語文を聴く. 

本当にこんな文を試験に使ってよいものだろうか. 

というか,自分の英語だって相当アンナチュラルなのだけれど. ネイティブスピーカーのようなナチュラルな英語は話せないのである.

ネイティブスピーカーが常に「ナチュラル」の指標になるというわけでもないと思うけれど.  

難しい仕事を引き受けてしまった.

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コメント

"Do you know who closed the window?"ってその前後のコンテクストは風を入れようと思ってたのに窓を閉めた犯人は誰?許せないわ!という感じでしょうか? "Oh! We're running out of gas!!"は結構ありそうですが、この一文だけだと「何とかしろ!」と突っ込みたくなります。

ところで来年の学会会場はボストンだそうです。私は来年自腹決定なので、ボストン行き貯金をとりあえず毎月してみます。

投稿: tressoles | 2009年3月29日 (日) 13:52

tressolesさん,おつかれさまでした.

>"Oh! We're running out of gas!!"は結構ありそうですが、この一文だけだと「何とかしろ!」と突っ込みたくなります。

私もです.

ボストン,私も行きたいなと思います.ちゃんと成果を出さなければいけませんね.

11月にはアリゾナに行きたいと思っています.まだプロポーザルを出していませんが….

そちらはそろそろ暖かくなってきていますか.春が待ち遠しいですね.お元気でお過ごしくださいね.


投稿: satchy | 2009年3月30日 (月) 09:27

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