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dichotomy

Sep19_005 ハワイ大学,シンクレア・ライブラリーから見える夕暮れの景色.

 一週間が終わった.

 週末に,この場所から夕暮れの景色を見ていると,はりつめていたものがゆっくりと穏やかに溶けていく感じがする. 

 最近,毎日何かに追われている感じで,一週間が過ぎるのがとても早い. 書けー書くのじゃ. 読めー読むのじゃ. という騎手のムチ打ちが一層激しさを増してきた感がある.

今週は,神戸外大から来られた先生のレクチャーを聞く機会があった. 先生はブロンドヘアのアメリカ人女性だが,ラストネームは「タツキ」さんだった. ご主人は日本人男性なのだろう. ブロンドヘアだけど名前は「タツキ」ってなんかすてきです. たつ吉さん. いや,タツキですから. たつ吉は近所の蕎麦屋さんの名前でした. そんなことはどうでもいいのだけれど,タツキ先生のご専門は「日本の広告のレトリック」研究なのだそうだ. 広告のキャッチフレーズは読み手の心をつかむ斬新なものでなければならない. ラブレターと同じである. ラブレターかい. そのレトリックにはどんなものがあるのかを日々探求しておられるのだそうだ. タツキ先生によると,日本の広告には次のようなレトリックがあるらしい. 

(1) Rhyme:(例)「ふわっくしゅ・ワックスでしゅ」⇒「わっくしゅ」と「ワックス」が韻をふんでいる. (2) Chime:(例)「ミルクでみるみるストレート」⇒「ミルク」と「みるみる」が韻をふみ,それが二回繰り返されている. (3) Puns: (例)「くる,こない,くる,こない,クール」(クールガムの広告)⇒ 「くる」と「クール」をかけている・・・

ふーむ,"Rhyme"に"Chime"に"Puns"にいろいろなレトリックがあるのですね. 勉強になった. でも,正直なところ,どの例もちょっとつまらない. 「ミルクでみるみるストレート」って. おもしろくないです. 「ふわっくしゅ・ワックスでしゅ」って. ちゅまんないでしゅ. 「くる,こない,くる,こない,クール」って. もうこなくていいです. これらは果たして本当に読み手の心をつかむレトリックとして成功しているのだろうか. そして,レトリック研究としてとてもおもしろいテーマだと思いつつ,分析が浅いという印象も受けた. 「ミルクでみるみるストレート」のレトリックが"Chime"だからどうだというのだと問いかけてしまった. 

Sep19_014  今週は自分のプレゼンテーションもあった. アーティクルを読み,ポイントをまとめ,ディスカッション・クエスチョンを作り,それらをパワーポイントにビジュアル化するという一連の作業は,結構時間がかかる. パワーポイントにのせる文字や図にも,見ている人の心をつかむためのある種のレトリックが必要なのである. 「ミルクでみるみるストレート」的なレトリックでなくてよいのだけれど. もうこれはいいですか.

プレゼンが終わった翌日,先生から早速フィードバックが届く. 大変熱心な先生である. 先学期に受けた某授業の先生とは大違いである. 先学期の先生は,「もうネタがつきちゃったから,これからはあなたがたにプレゼンしてもらいますかね」という感じで,かなり適当だった. ネタつきたら今度はわたしらにやらせるんかい. アーティクルの内容がよく分からないので質問に行ったところ,"I honestly don't know"(実は僕も分からない)とか言われたりして. 分からんのかい. さらに,「今日は体調が悪いので授業はこれでおーしまい」とか言って,突然授業が終わることもあった. しんどいから帰るって小学生かい. 「おーしまい」で思い出したが,「今日はこれでおーしマイケル」というのが持ちネタのマイケルという芸人さんが昔いたような気がする. まだ日本のテレビに出ているのだろうか. 「おしマイケルは」,「おしまい」と「マイケル」をかけているという点で,レトリックは"Puns"に相当する. だからどうだというのだ. さらに,「お母さんが病気になったからしばらく実家に帰ります. したがって授業はしばらくお休み. え?メイクアップ? そんなのしーらないっ」とか言って,授業が3回ほど休講になったこともあった. 休んだら休みっぱなしなんかい. どんマイケル. 

「ミルクでみるみるストレート」などのレトリック研究はおもしろいといえばおもしろいし,おもしろくないといえばおもしろくない. おもしろい研究だと感じている自分もいれば,つまんないことやってますねと冷めた目で見ている自分もいる. 熱心な先生もいれば,適当な先生もいる. 熱心なのはすばらしいが熱心すぎてそれが重く感じられることもあり,そんなときは,「今日はしんどいからこれでおーしマイケル」とか言っておうちに帰ってしまう先生のいいかげんさを恋しく思ったりする. 

ものごとの価値は"dichotomy(二極分化)"で判断できるものではないのかもしれない. 自分の場合は「うーんどっちでもいいんじゃない?」という"ambiguous dichotomy"でものごとを認識することが多いような気がする. しかし,こういうのは無責任なのかもしれない. いまだに議論が上手にできないのはこの"ambiguous dichotomy"な判断基準が原因なのかもしれない. 責任ある議論を求められることが増えてきたような気がする今日この頃. どっちでもいいんじゃない?という逃げ道はもうおしマイケルにしなければならない.  

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コメント

今日は江戸ソバリエなる言葉を目にしてびっくりしました。
http://www.edosobalier.jp/

投稿: しらいし | 2008年9月22日 (月) 19:24

面白い。改めてSatchyさんの文章は面白いです。
「ふわっくしゅ・ワックスでしゅ」ってどうなんでしょうかね・・・。
ここ数年で心に響いたキャッチコピーは大手化粧品会社の「一瞬も 一生も 美しく」ですかね。女性のコピーライターさんが書かれたものです。
残る余韻が好きです。まさにラブレターですね。
長々と書いたので、この辺で、おしマイケル。

投稿: Tekkan | 2008年9月23日 (火) 02:06

【しらいしさん】
しらいしさん,こんにちは.お元気ですか.

江戸ソバリエ.これまたしぶい資格ですね.

認定講座は,耳学,手学,舌学,脳学の4つの分野から科目を履修するようになっているのですね.舌学の「食べ歩き10軒以上」が一番きつそうと思いました.

「江戸ソバリエの心」とは何かを学ぼうと思ったのですが,「ご自分流の『江戸ソバリエの心』を確立してください」とあって,なんかてきとうやと思いました.自分流でいいんかい.

でも,江戸ソバリエ,これから目が離せない注目資格です.ありがとうございました.

投稿: satchy | 2008年9月23日 (火) 19:10

【Tekkanさん】
Tekkanさん,こんにちは.元気にしてますか.

Tekkanさんにほめていただけるとうれしいです.フリーライターとしてTekkanさんのお仕事のアシスタントをしたいと勝手に思っている今日この頃です.ほんとに勝手ですね.

「一瞬も 一生も 美しく」.心にグッとくるキャッチコピーですね.これだけの短い言葉で人の心をとらえるってとても難しいことですよね.

Tekkanさんの作品が出る日が待ち遠しいです.ぜひ一緒に仕事を.ほんとに勝手ですね.長くなりましたのでこのへんでおしマイケル.

元気でね.

投稿: satchy | 2008年9月23日 (火) 19:30

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