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日本語と英語

認知言語学のプロジェクトで,日本語と英語の移動様態動詞 (manner-of-motion verbs) について調べている.

移動様態動詞とは,移動の様態を表す動詞のことである. そのまんまやん.

つまり,人や物が動くときにどんな動き方をするかということである. 

たとえば,「歩く」という行為の様態を表したいとき,日本語では次のような言い方をする.

ヨチヨチ歩く.

ブラブラ歩く.

トボトボ歩く.

ヨタヨタ歩く.

上の四つの例からわかることは,日本語で移動の様態を表すには,動詞はオノマトペ(擬声語・擬態語)の力を借りなければならないということである. どの例も動詞は「歩く」が使われている点がおもしろい.

これを英語で言い換えてみると,

ヨチヨチ歩く. ⇒ toddle

ブラブラ歩く. ⇒ stroll

トボトボ歩く. ⇒ plod

ヨタヨタ歩く. ⇒ hobble, waddle

となる.

日本語と違って,英語には,ヨチヨチ,ブラブラ,トボトボ,ヨタヨタを区別する動詞があるのである. 

この例からわかることは,英語は,移動様態動詞が発達した言語であること. それに対して,日本語は移動様態動詞が発達していないため,副詞やオノマトペが移動様態表現として機能すること. このことから,英語は"motion-in-verb language",日本語は"motion-in-adverb language"と呼ばれるらしい(Matsumoto, 1996; Wienold, 1995).

・・・

おもしろくなかったでしょうか.

わたしはとてもおもしろいと思ったのですが. 

人間の認知メカニズムは言語に規定されているという点がとてもおもしろいと思うのです.

先日,部屋の煙感知機がピコピコ鳴ったことがあったが,そのときも,日本人のわたしは,

ピコピコ鳴る

オノマトペを使ったのに,アメリカ人の管理人さんは,

chirp

という動詞を使ったのだ.

やっぱりおもしろい.

ことばの研究は奥が深い.

移動様態動詞など日本語・英語のタイポロジーについては,神戸大学の松本曜先生が第一人者らしい. お名前の「曜」は何か特別な読み方をするのかなと思って調べてみたら,ふつうに,「ヨー」と読むらしい. ヨーヨー. 

そういえば,日本人のラップの人はいつもヨーヨー言っている.

ヨーヨー歌う.

これもオノマトペといってよいのだろうか.

松本曜先生とは全く関係ありませんでした. 先生のこのが読みたい. けど,この島には,紀伊国屋もジュンク堂もない. ヨーヨー.

Mar10_009 そういえば,先日,ワイキキビーチ沿いを歩いていたとき,前から歩いてきたよく肥えたアメリカ人おばあちゃんのビキニがはずれるというハプニングに遭遇した. 本当に目の前だったので衝撃だった. よく肥えていらっしゃったこともあり,とても大きな物体がボヨンボヨン動いていた.

ボヨンボヨン動く ⇒ bounce

この例も,英語は移動様態動詞が発達し,日本語はオノマトペが発達していることを表しているのではないかと思った. 教室で使用する例としてはふさわしくないかもしれないが. コラ.

ことばっておもしろい.

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コメント

onomatopoeia、前からずっと気になっていたんですよね。
ずっと、日本語の擬音語を使った表現を英語にすると、なんか、種類が違うなって思っていたんだけど、そういうことだったんだ。motion-in-verbとmotion-in-adverb、覚えておこうっと。

onomatopoeiaに関しての日本語、英語比較の英語で書かれた文献で、何かよいのあったら教えてください!

tick, click, honk, splash, dong, warble, rustle, sloshとかしか、onomatopoeia、今、思いつきませんね:(

投稿: masaki | 2008年3月23日 (日) 22:57

おもしろいですね!このような比較言語の事例を伺うと、見えなかったものが見えてきます。ありがとうございます。

言語が発達していく過程で、何かしらの歴史があるのですよね。いとをかし。うふふ。

違いといえば、高校生の時、教科書に出てきたvenisonとかmuttonの単語から、日本語と英語では食肉の言い方が違うんだーと思ったことを思い出しました。

ちなみに沖縄の方言で豚の内臓は「ナカミ」といいます。中身汁。そのままやんか。お祝い事によく出されます。ちょっと見た目グロですが。また、リブ部分を「ソーキブニ」といいます。ソーキ骨。ソーキはザルのことで、ザルのような骨(のまわりについた肉)これまたそのままやんけ。琉球人って語彙力に乏しかった?それとも合理的だったのか?

何はともあれ、言語学についてはほとんど分かりませんので、これからもおもしろネタお願いします!楽しみにしていますね。

パチパチ手をたたく(clap clap!)

投稿: ねこたん | 2008年3月24日 (月) 03:23

【masakiさん】
masakiさん,こんにちは.お返事が遅くなってしまってごめんなさい.

松本YO!先生の本(↑リンクしています)がおもしろそうです.海外発送をしてくれればいいのだけれど...

松本YO!じゃなくて松本曜先生です:-) 怒られますね.

日本語のオノマトペを表す英語は知っていても使ったことはあまりないように思います.

逆に英語ネイティブの日本語学習者は日本語のオノマトペをどうやって習得していくのか興味があります.

そちらは暖かくなってきていますか.この前,本屋さんでWorld Atlasを見ていて,masakiさんがいらっしゃるところってすごい「北」なんだなと改めて思いました

【ねこたんさん】
ねこたんさん,こんにちは.

沖縄方言のこと,教えてくださってありがとうございます.「ナカミ」も「ソーキブニ」も初めて聞きました.おもしろいですね.

そういえば,拍手のパチパチも"clap"という動詞が使われるのですよね.おもしろいです.

沖縄に行ってみたくなりましたー.

ありがとうございました!

投稿: satchy | 2008年3月27日 (木) 04:20

SATCHYさん、

お元気ですか、元seaviewのtokoです。いつも突然おじゃまします・・
便便(ベン)の授業で、manner of motionのリサーチを日本語のオノマトペでやったので興味をそそられてついついコメントを入れています。
今思い出すとどれだけ直感的で乱雑なペーパーかと思いますが、当時はがむしゃらにがんばっていたことを思い出されます。
もし日本語では様態が付随するものだったら、言語が認知に影響を及ぼすというlinguistic relativityの観点から、日本人はあまり様態を認知しない=口にしないと考えられます。当時私は本当にそうでしょうか、と疑問に思ったのが発端です。例えばSatchyさんがビーチで肥えたおばちゃんの物体を目撃したときただ単に「動いている」ととらえると仮定されます。でも実際は多くの人が「ボヨンボヨン」を想像するのではないかなぁと思ったのでした。でもこれは動詞の違いじゃなくて日本語のオノマトペに何か特殊な性質があるのかな。私も松本YO!先生(おっと)の本を読まなくては。Satchyさんの場合とっさに英語でbounceと判断したかもしれませんしね。バイリンガルが「ボヨンボヨン動く」と認知した場合と「bounce」と認知した場合には動きの度合いに違いがあったりするのでしょか。あはは 認知言語面白いですね。もしよかったらSatchyさんがこの授業でどんなリサーチをされたか聞かせてください。

あと質問なんですが、シュミット先生のawareness hypothesisについて読みたいなぁと思ったら、どちらの文献からあたったらよいでしょうか。今まで全く読んだことがありません。時間があるときにでもお返事くださったらうれしいです。

いつも言語学などの面白い話ありがとうございます;)

投稿: Satokotoko | 2008年4月12日 (土) 07:31

【Satokotokoさん】
Satokotokoちゃん!!

コメントありがとう!!お元気ですか?


>日本人はあまり様態を認知しない=口にしないと考えられます。当時私は本当にそうでしょうか、と疑問に思ったのが発端です

私もSatokotokoさんと同じこと思いました.様態の表し方は,英語と日本語ではlinguisticallyに違うだけでconceptuallyには同じものがあるんだと思います.Satokotokoちゃんの分析は,英語話者が動詞で認知するものを,日本語話者はオノマトペで認知するということですよね...わたしもSatokotokoちゃんの分析に賛成ですー.

英語に相当する様態表現がないから日本語話者は様態をあまり認知しないっていうのは,なんかEnglish-centeredな考え方だなぁと思えてしまいます.

認知言語学,おもしろいですね.このセミナーで,かなりはまってしまいました.リサーチでは,空間言語(spatial language)とか方向性メタファー(orientational metahor)について調べているんです.Satokotokoさんにフィードバックいただけたらうれしいです.なんせ全然バックグランドがないのでひーひー言ってます.

Schmidt先生のawareness, attention関連の本ですが,先月出たばかりの本があるんですよ.セミナーでもその本を読んでいるんです.cognitive lingとSLAを結びつけた画期的な研究書みたいです.

http://www.amazon.com/Handbook-Cognitive-Linguistics-Language-Acquisition/dp/0805853510

PDFファイルでよければお送りしますよ(容量がかなりありますけど).ブログの右下のところからメール送信できるようになっているのでもし必要なら言ってくださいねー.

元気でね.

投稿: satchy | 2008年4月12日 (土) 20:32

Satchyさん、お返事ありがとうございます。

日英語では様態の表し方がlinguisticallyには違うけどconceptuallyには一緒って、なんともわかりやすいご説明を!そうですねえ そういうことだったんですねぇ ボヨンボヨンとbounce 同じコ ン セ プ ト・・
 
日英の言語的な違いは目に見えてわかるものなので説明されがちですけど、このconceptuallyな違いもうまく説明してあげれば生徒さんたちももっとしっくりくるのかもしれませんね。今は生徒に「~は日本語でなんと言うんですか」と聞かれた場合、「日本語ではそういう言い方はしないんだよ~こうなるのさ」という感じになっていますが。

先月出たばかりの!リサーチの先端にいらっしゃる方と連絡が取れて、なんとも幸運なtoko..もしPDFを送っていただければ大変ありがたく思います。右下のところからメールを送りまーす。

リサーチがんばってください!フィードバックできるほどの知識があるとは思えませんが、Satchyさんとこうして言語学について語れたらうれしいです。あともしパイロットスタディーの被験者など必要で、マウイからでも可能でしたらいつでも参加させてください!そしたらその後Satchyさんのリサーチが読めるし・・けけけ

どうかお体にはお気をつけて・・

投稿: Satokotoko | 2008年4月14日 (月) 17:41

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