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読んだものをどう要約するか ―必要な分析力―

久しぶりにお仕事のお話です…。

最近、学生さんの書いたBook Report(読んだ本の内容を要約するレポート、感想文ではない)を見る機会があり、多くの学生さんに共通して見られる、ある一つの特徴に気がつきました。

その特徴とは次の二つ。 まず一つ目は、「起こった出来事を全て書こうとする」こと。そしてもう一つは、「一連の出来事を起きた順番に並べる」こと。いわゆる、「時系列連鎖型」のまとめ方(叙述の方法)です。

たとえば、チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』を読んだAさんの場合。「オリバーが生まれたとき、すでに両親は亡くなっていました。その後、オリバーは孤児院に引き取られました。そして、ロンドンのある町で犯罪グループの仲間に入れられます。そして、仲間から万引きをしてくるよう指示されます。しかし優しいオリバーには犯罪を犯すことができません。そんな中、オリバーは、あるお金持ちの紳士に助けられます。そして、その裕福な家庭で育てられます。しかし、また犯罪グループに連れ戻されます。そして、、、そして、、、そして、、、(延々ストーリーが続く…。)」 というような感じです(実際のレポートは英語です)。

この文章からは、Aさんが、一連の出来事をすべて正確に読み手に伝えようとしていることが伝わってきます。それはそれで、評価に値すると思います。が、しかし、正直、分かりにくい。そして、「だから、オリバー・ツイストってどんな話なん?? So What ??」って言いたくなってしまう。つまり、これじゃ、本の要約になっていないし、Book Reportとはいえないわけです。

でもね、これ、Aさんだけじゃないんです。大学1、2年生の人に本の要約させると、多くの場合この「時系列連鎖型」になってしまうんです。前にもブログで書いたと思うんですが、日本人大学生は、大学に入るまでに、要約の仕方を習っていないし、読書感想文を書いたことはあっても、本の要約なんてほとんどしたことがない、というのが現状です。だから、大学に入っていきなり、「読んだ本を要約せよ」て言われても、どうすればいいか分からないんですね。だから、大学では、「こうやって要約するんだよ」っていう形式を、ある程度教えてあげないといけないんだと思います。

では、読んだ本の要約ってどうやってしたらいいんでしょう? 次の二つのポイントが重要になると思います。まず、「結果(物語の場合は総括)に目をむけ、その結果を説明するために必要な情報は何か、を考えること」。 そして、「なぜその結果になったのか、なぜそれが起こったのか、どのような因果関係が認定されるか、を考えること」。 簡単に言うと、結果から振り返って原因を探すための情報の取捨選択を行う、ということです。

この「必要な情報を取捨選択できる能力」のことを、認知心理学の分野では、「分析力」と呼んでいます。渡辺(2004)は、この分析力について次のように述べています。

「分析力とは、主題に関係することがらと、関係のないことがらを区別できる能力、時系列順に並べられた出来事から、結果と直結する原因を抽出する能力である。」

主題や結果から見て重要な情報とそうでない情報を選別できる力って、ものすごく大事だと思う。簡単そうに見えて実はとても難しいんじゃないのかな。大学生だけじゃなく、院生や社会人の方が書いたものを見ていても、主題と無関係なことを書いてしまうパターンって、すごく頻繁に見受けられます。

分析力は、critical thinking skillsproblem-solving skillsの核心的要素でもあると思います。この力が身につけば、自分の頭の中が整理され、自分の考えを人に分かりやすく伝えることがもっと上手になるかもしれない。そうすれば、学ぶことがもっと楽しくなるかもしれない。オリバー・ツイストの要約を書いてくれたAさんにも、「次のBook Reportのときは、『情報の取捨選択』を意識して書いてみようねー」なんて話をしたんだけど、わかってもらえたかなー。

「分析力」、、、これ、大学に入る前、小・中・高校の時期にもう少し鍛えることってできないのかな、ってsatchyはいつも思っているんだけど、みなさんはどう思われますか。読書感想文の「どう思いましたか」じゃなくて、「なぜそうなったのか相手に分かるように説明しなさい」って感じの質問をして書かせる、、、こういう活動も早い時期から取り入れるべきじゃないでしょうかね。

02021_1納得の構造 ―日米初等教育に見る思考表現のスタイル』(渡辺雅子著、東洋館出版社、2004)

日本人の分析力について、アメリカ人のそれと比較しながら論じています。めちゃおもしろくて勉強になる。が、ちょっぴり、日本とアメリカをclearcutに分けすぎて、ステレオタイプが入っている感もあるけど…。

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コメント

Satchyさん、こんにちは。
この間はブログにコメントありがとうございました。
気まぐれ更新ですが、これからもよろしくです。
本の要約、難しいですよね。
複雑で長いストーリーのどこを選ぶか、って結構その人のオリジナリティが出るのかもしれません。
話は変わりますが、金曜日に小学校に行ったら、国語の時間に討論会をやっていました。
「宿題をなくすべきか」などのテーマについて、肯定側と否定側に分かれてディスカッションをしてたみたいです。
論理的思考力とか、説得するロジックとか、
最近の国語教育も力を入れようとしているんだなーと思いました。
10年後の日本の大学生は変わってるのかな?

投稿: ゆうこ | 2006年6月10日 (土) 17:35

ゆうこさん♪
ふーん、小学校でディベートをやっているんですね。国語教育も変わりつつあるってことでしょうか。とても興味深いです。小学校の国語教育についても調べたいと思っているので、またいろいろ教えてください。

投稿: satchy | 2006年6月12日 (月) 23:36

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